死々若丸は、鈴木から怪しげな錠剤を手渡された。
「トキタダレの?」
それは、飲むと肉体が退行する…つまり子供になる薬。

この日は近隣で花火がある。
そこで鈴木から提案が。子供の姿になって花火を観に行こうというのである。

「何故わざわざそんな…」
死々若丸は怪訝な表情をしたが、

「輪投げ、ダーツ、射的…」
「?」

「子供の姿なら屋台の遊びも堂々とできるし、安いし、おまけしてくれるかもなぁ…」
まるで独り言のように呟く鈴木。
ぴたり。
死々若丸の動きが止まったのを見て、ふふんと笑う。

そのままの姿では素直にはしゃぐには抵抗がある。が子鬼姿では人前に出られない。
甘い誘惑に乗せられて…つい、承諾してしまった。


実は、まったく別の狙いがあるとも気づかずに。


まもなく薬の効果で見た目10歳前後になった死々若丸。
いったいどこであつらえたのか子供用の浴衣を着せられ、花火大会に出かけた。



***



花火が始まるまではまだ時間がある。二人はにぎわう屋台街へ。
周りは子供であふれ、案の定まったく違和感がない。死々若丸もついつい見た目に合わせて心を開放し、楽しんでしまう。
周りからは仲のよい兄弟にでもみられているだろうか。

「鈴木、わたあめ食いたい」
掬ったスーパーボールの袋を手に提げながら、死々若丸がいう。
「わたあめはダーメ。あんなの砂糖膨らしただけで何百円もとって、一番詐欺なんだから!」
地味に現実的な鈴木。
死々若丸は口を尖らせたが
「じゃあリンゴ飴買え!一番でかいの!」
と、返事も聞かず駆けていった。

ちらり、と、時計を見る。
(そろそろいいかな…)


遊びも食べ物も充分満足したところで、二人は屋台街を離れた。


***


花火がよく観られると鈴木が死々若丸を連れてきたところは 薄暗く、少し地形が険しいせいもあって他に人が全く誰もいない、まさに穴場中の穴場。
厳しい修行を積んだ二人にとってはこんな斜面や凹凸は無いようなものだった。

鈴木は腰を下ろすと、膝をぽんとたたいた。
「死々若、ここおいで」
へらへら笑ってやがるのでシカトしてやろうかとも思ったが、今日は屋台を堪能させてくれた恩があるので従った。
小さい死々若丸は腕にすっぽり収まってしまう。そうして背中から抱かれる形になる。

「そろそろ時間だな」
花火のことだと思い、死々若丸は空を見た。
が、
その時。

どくん−

「え?」

どくん−

心臓の音がやたら大きく聞こえたと思ったら、一瞬目が回ったようになり、気づいたら目線が先ほどより高くなっていた。

薬の効果がきれ、元の体に戻ったのである。
「おま…これどういう」
苦しい。子供用の浴衣がきつくて体を圧迫するのだ。
「あー、これは仕方ないなあ。」
しらじらしく言って浴衣を脱がす。
鈴木の腕の中で丸裸にされてしまった死々若丸。逃げ出すわけにもいかない。

「大丈夫だよ、誰も来ないから」
ひゅるる…ドーン
ついに始まった花火が夜空を照らす。
その灯りで淫らな自分の姿が目に入り、顔が紅潮するのを感じる。

「お前…始めからこれを狙ってたんだな」
ご名答といわんばかりに
「トキタダレの効果はそう長くないって、知ってただろ?」
笑う。

「コロス!!」
暴れようと思ったが抑えられた。
「大きな声出すと人が来るぞ?」
「ッ…。」


「…わかった。望みどおりにしてやろう」
死々若丸は覚悟を決めたがごとく、向きをかえて鈴木を押し倒した。
「!?」
意外にあっさり観念してくれたので鈴木は驚いた。
それどころか妙に積極的で、首筋に吸い付きながらテキパキと浴衣を剥いでいく。

うっとーりしていると、突如 覆いかぶさる体重が消えた。
何事かと起き上がって周りを見ると、今脱がせた鈴木の浴衣を着て帰ろうとしている。
「ちょっと待てぇぇーい!!」
「デカい声出すと人が来るぞ馬鹿。通報されろ変態。」
語調は絶対零度。

「し、死々若丸様…」
容赦を懇願。それでも聞かない。
「若ちゃんごめんてば…」
なんとも情けない声。
ひゅるるるひゅるるひゅるるるる…
ドンドンドンドンパラパラパラ……

フン。
さてどうしてやろうかと考える。
さすがにこのまま捨てて行くのはあんまり哀れだし、この花火もせっかくだ観ていたい。

「死々若、後でわたあめ買ってあげるから!」
必死の鈴木。 少し揺れた。
「…2個!!」

ぴたり。

その言葉でようやく 戻ってやることにした。


少々不満そうな顔をしながら、自ら帯をほどく。
「声…出すなよ?」




空には大輪の花。
地上でも熱く咲き乱れるのがふたり。


えろだと言い張る。(滅)
しかし本番は書けないのでいつも直前まで…すみません。(そんなエロスキルで野外かよ←…。)
この後のことは各自妄想にゆだねます。
ちなみに帰り道は、子鬼姿で着てきた浴衣にくるまって 運ばれるので人目は問題ありません。(要らんフォロー)