2人の出会い。
共に戦ったこと。
過ごした日々。
決して消えはしない
何があろうとも…




この日は久しぶりに6人衆が全員集合しようとしていた。
修行中は幻海の家に住んでいたが、幻海の死後、6人は一緒に暮らすことはしていなかった。それでも会う事はしていたが、6人全員がそろうとなるとなかなかないなのである。
集合場所となったのは死々若丸の家。死々若らしい日本風の広い家に鈴木と2人で暮らしている。

4人を迎え入れる死々若丸。
「久しぶりだね〜死々若。はいこれ土産っ。美味いんだぜここのお菓子!」
「おぉ、悪いな。台所は向こうだ。茶の用意を頼む。」
「…死々若、普通は客にそういうことやらせないぞ。」
といっても死々若の唯我独尊は今に始まったことではない。ツッコミを入れた凍矢はすぐにあきらめて、鈴駒から茶菓子を受け取り台所へ向かった。陣もそれについていく。
「俺は茶より酒のほうがいいんだが…」
酎がポツリと呟く。それを聞き逃さない死々若丸。
「あのなあ、誰が昼間っから飲ませると思う?たとえ持参したところでうちじゃ酒宴はさせんからな!」
「なんだよつれねぇなあ。鈴木なら一緒になって飲んでくれるぜ?」
ぴたり。
鈴木の名前が出たとたんに死々若丸の様子が一変した。
「あ の 馬鹿 の名を出すな!!」
鋭い眼光で酎をにらみつける死々若丸。
入り混じる殺意に戸惑う酎。とそこへ、台所から盛大な物音がした。
「陣!どうやったら湯飲みを取ろうとしてそんなに皿を割れるんだ!」
凍矢の声。
ぶちっ
殺す!
キレた死々若丸は、魔哭鳴斬剣を手にする。
「おいおいマジかよ!?」
「あ〜〜もうっっ デビルヨーヨー!」
「離せコラッ!」

…鈴駒のデビルヨーヨーで拘束された死々若丸。それをよそに4人はお茶菓子をつまみながら一息ついた。
「ったく。今日の死々若はいつもにも増してキレてるな。」
4人はもうこの程度のことにはびっくりしない。こんな時は大抵 鈴木と何かあったからだ。
「今回は何だ?喧嘩か?」
「別に。」
顔は不機嫌のままだが、少し落ち着いたらしい。子鬼の姿に変身して縄から抜けた。
「で、鈴木はどうしたんだよ?さっきから姿がみえねぇけど…」
もう暴れる気はなさそうなのをみて、酎が訊く。
「あいつならもう一ヶ月も実験室に缶詰だ。」
「いっ…?」
一ヶ月。
言い捨ててお茶菓子に手を伸ばす。
「成る程、鈴木が相手にしてくれないから拗ねているのか。」
微笑を浮かべて言うのは凍矢だ。
「だっ誰があんな!!」
「顔が赤いぞ。」
「…。」
さすがに、付き合いは短くとも時間を共有した仲間だけはある。死々若丸の想いは見透かされていた。
「丁度お茶入れたことだし、呼んできてよ死々若っ。」
「せっかく久しぶりなんだから全員集合したいだよ〜。」
鈴駒と陣が迫る。
「ね!」
「な!」
「…そこまで言うんなら…行ってやってもいい。」
さも面倒くさそうな口ぶりで立ち上がる。
「やれやれ。素直じゃないな。」
死々若丸は早足で鈴木の実験室へ向かった。



鈴木がアイテム開発に没頭するのはいつものことだし、それは鈴木の趣味で特技だから否定する気は無い。
いよいよ実験段階になると鈴木は何日も実験室にこもりきりになる。風呂も食事もいつの間に済ませているのか。とにかく死々若丸と顔をあわせることはほとんど無かった。
しかしさすがに、一つ屋根の下に暮らしていて一ヶ月もろくに顔をあわせないというのは普通のことではない。
拗ねたって鈴木は出てこない。
ただ…寂しかった。
4人が来たのは嬉しかった。久しぶりに会話というものをした。


広い邸宅の一角。離れの一室が鈴木の実験室として利用されていた。
ここならば大規模な爆発を起こしても母屋への被害が少なくてすむからだ。
魔界と霊界との衝突も無く、平和になったとはいえ鈴木の探究心は衰えていなかった。
絶対立入禁止
危険

そんな事が書いてある実験室のドアの前まで死々若丸はやってきた。
コンコン
ノックをするが反応は無い。
「鈴木?」
中から物音はしている。
「今 陣たちが来てるんだ。忙しいのはわかるがちょっと出てこないか。」
返事は無い。
「おい鈴木!!」
…全くのノーリアクション。
だんだん腹がたってきた。
「俺をここまでシカトするとはいい度胸だ…」
シャキンッ
鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス。
死々若丸は、研究室のドアを魔哭鳴斬剣でたたっ斬った。
「どうだ!これで出てこざるを得…」
くらっ
「え…?」
開放された実験室からは怪しげな煙があふれ出した。それを吸い込んだ瞬間、死々若丸は意識を失って倒れてしまった。



一面真っ白の世界。
朦朧とする意識。
俺は確か何かをしようとどこかへ行って…
何を?‥‥誰のために…?
記憶に霞がかかる。


「ん…。」
かすかに意識が現実に戻った。どのくらいの間 気を失っていたか分からない。
「死々若!!」
「よかった〜、気付いたんだな。」
布団の周りには心配した仲間が詰め寄っていた。
「ったく、ドアまで壊して。危険だから近寄るなと言っただろ!どこにも異常はないか?」
一番近くで一番心配している金髪の青年。鈴木だ。
肝心の死々若丸はうつろな瞳。
「…ここはどこだ?」
「え?あぁ、ここはお前の部屋の隣だよ。」
キョロキョロとまわりを見渡す死々若丸。
「死々若…?どうした、どっか痛いのか?」
すると、死々若丸は明らかに不快だという表情をした。
そりゃそんだけ付きまとえばうっとおしいだろうよ…と、凍矢たちは周りで見ながら思った。鈴木の過保護はいつものことだから。
が、次に出た言葉は意外なものだった。
「馴れ馴れしいな…貴様は誰だ。」
「へ?」
「俺はどうしてここにいるんだ?」
「は?」
死々若丸以外の5人はお互いに顔を見合わせた。
「死々若…死々若丸?」
自分の名前を呼ばれていると気付いていない。
「なあ、これってまさか。」
「…どうやらそのようだな。」

記 憶 喪 失


予想だにしない事態が起こった。
あの時、死々若丸が突入(強行突破)した部屋には未完成の薬が気化して充満していた。
…ちなみに鈴木はマスクをするなど、きちんと対策をとっていたので大丈夫だった。
そもそもあの時鈴木は、神経霍乱系のアイテムを制作していたらしい。
その煙を吸った影響が、記憶障害という形であらわれたようなのである。

「俺!酎だって!マジでわかんねーのか?」
「ちゅう?…酒臭いな貴様。寄るな。」
記憶を失った死々若丸だが、傲慢な態度は変っていない。
しかし過去の出来事、ともに修行した仲間、自分が妖怪である事実にさえも実感がわかないようであった。
噂を聞きつけた幽助・蔵馬・桑原…毎日のように人が訪れた。

そうして数日が過ぎた。
ある昼下がり。来客も納まり、一人縁側に座っている死々若丸。
その瞳は何も映していないかのように…しかしどこか寂しそうに…虚空を見つめている。
「いい天気だね、死々若。」
鈴駒がひょっこりと隣に現れた。
「…何日もたつけど、なにも思い出さない?」
「ああ。」
死々若丸の傍らには、いつものように魔哭鳴斬剣が置いてあった。
「その剣、覚えてる?」
「これは…俺の……」
剣を手に取る。
記憶に無い。しかし、とても大切な物であった気がする。
この剣を見ていると何かを思い出しそうになる…
「んっ…」
にわかに襲う頭痛が記憶を取り戻す邪魔をする。
「あ…ごめんっ。水 持ってくるね!」
鈴駒は台所へ駆け出した。
頭を押さえる死々若丸。
何かが足りない。自分自身でそう感じていた。
何が足りないのかはわからない…。

「死々若、可哀想だ。」
彼を一人にしておいて、凍矢たちと集まった鈴駒が言う。
彼らは、記憶を失ったその日から毎日様子を見に来ていた。
「こんな時に鈴木は何やってるだ!」
陣が声を荒らげる。
あの日以来、鈴木はまた部屋に閉じこもった。
自分が作った薬のせいで死々若丸が記憶を失った。今は、解毒薬の開発を急いでいるらしい。
「あの馬鹿…今 死々若丸に必要なものが何かわからないのか?」
酎がイラついて壁を殴った。
「おい酎…」
「見てらんねぇぜ。ちょっと行ってくる。」



俺のせいだ
俺のせいだ
俺のせいで死々若が…
俺の技術が未熟なせいで…


同時刻、鈴木の自室。
鈴木は自分を責めていた。
あの薬はまだ未完成なもので、記憶障害の原因は鈴木にもわからない。一刻も早く解明して、死々若丸の記憶を取り戻さなければならない。
あれから何日も、薬を開発していた時以上に寝る間も惜しんで、研究に打ち込んでいた。
ばんっ
乱暴にドアが開けられる。
「鈴木…てめぇまだこんなことしてるのかよ。」
酎だった。
「おいっ ここは危険だから来るなと言っているだろう!お前にまで何かあったら…。」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!こんなとこで引きこもってないでちゃんと責任取れよ?」
「わかってる。だから今こうして…」
バキッ
言い終わらないうちに酎の鉄拳がヒットする。鈴木は部屋の対極まで吹き飛ばされた。
棚のものや崩れた壁が落ちてくる。
「何す…」
「わかってねえよ……お前、死々若丸の顔 見たか?記憶を失ってからじゃねぇ。お前がいなくなってからだ。」
鈴木は瓦礫に埋もれて黙った。
「ずっと寂しそうな顔してるんだぜ。お前が死々若丸のこと放っておくから。わかるか?
あいつには薬よりお前が必要なんだよ。こんなときこそ支えになってやれよ!
4人が訪ねてきたときの死々若丸のイラつきの原因。記憶を失った死々若丸が無意識に欲しているもの。それは他ならぬ鈴木だった。
鈴木は目先のことにとらわれて、死々若丸のことを想うがゆえに一人ぼっちにさせてしまっていた。
今、殴られて怒鳴られてようやくそのことに気付いた。
「酎…」
「早く行けよ。」
酎は少し笑って、親指で くい と外を指した。
駆け出す鈴木。

「ったく、世話がやけるぜ…。」
「お前にしては気がきくことをしたな。」
背後から凍矢たちがあらわれた。
「あ〜ぁこんなに部屋壊して…。少しは手加減しろよ!」
「あのヤロウが不甲斐ないからいけねぇんだよっ」
「…うまくいくといいだな〜」


俺は馬鹿だ
俺は馬鹿だ
もう少しで大切なものを失うところだった…

「死々若!!」
縁側に一人腰掛けている死々若丸のもとに、息を切らした男があらわれた。
「何だ。貴様は俺のどんな知り合いだ?」
知らない知り合いに心配されるのに飽き飽きしていた死々若丸は、面倒くさそうに言う。
しかし、今度の来客はいつもとは少し違った。
ぎゅうっっ
男は唐突に死々若丸を強く抱きしめた。
「お、おいっ?」
「ごめん…死々若、ごめん…」
包み込まれて顔は見えない。が、聞こえてきたのは今にも泣き出しそうな声。
死々若丸は抵抗するのを止めた。
なんだか…この感じには覚えがある。ずっと前から…そう何度も感じた温度だ…
「鈴…木?」
呟く。
「?!思い出したのか?」
「え…?いや。何で俺…。」
自分でも何でそんな言葉が出てきたのか分からなかった。記憶が戻ったわけではない。しかし、自然と言葉が出てきたのだ。
希望が見えた。
こうやって少しずつでいい。思い出していける…2人なら。
鈴木は死々若丸の頭をなでた。
お互いに少し笑顔が戻った。



翌日から、鈴木は積極的に死々若丸と一緒に記憶めぐりをすることにした。
幻海の土地の中で 修行によく利用していた場所へ行ってみる。
険しい山である。
ヒュオオオ‥と、風が吹き抜ける音がする。
「高…」
自分が強い妖怪であるという記憶をも失っている死々若丸は、鈴木にしがみついて怯えていた。
「ほら、そこの谷はお前が作ったんだぞ?」
「そんなことできるわけがないだろう!」
これは困った。
プライドの高い死々若丸が妖怪の自覚を失ってしまうとは。
今のこの時代に刀を持ち、和服を着て生活していることからして普通でないといい加減認めてほしいものだが。
「じゃ、変身もできないのか?宙に浮けるんだぞお前は。」
なおも信じない。ふざけたことを言うなと頬をつねる。
なかなか道は険しい。

帰宅後、魔哭鳴斬剣を改めて手にする。
「これ、覚えてるか?」
死々若丸は首をふる。
「とても大切なものだった気がする。」
「お前はそれで妖怪と戦ってたんだからな。」
「だから…俺は妖怪なんて!」
未だ認めようとはしない。
「百聞は一見に如かず・だな。」
鈴木は死々若丸の手をとり、両手で柄を握らせた。
「この剣は普通の剣じゃない。お前の妖力があって初めて力を発揮できる…」
そう言いながら、左右に手を広げる。柄は二つに分かれ、中から肉塊のようなものが現れた。
これが魔哭鳴斬剣の本当の姿だ。
「なん‥だコレ…」
死々若丸の顔に驚きと恐怖が浮かんだ。
「嫌…だっ!放し…」
刀を持たされている腕を放すよう、抵抗する。
「死々若!思い出してくれ…」
鈴木の思い虚しく、魔哭鳴斬剣でも死々若丸の記憶は取り戻せなかった。
柄が完全に開ききると、死々若丸は気を失って倒れてしまった。


「ちょっと荒療治だったかな…」
再び床に伏した死々若丸を前に鈴木が呟く。
陣たち4人も集まっていた。
すると、玄関先に人の気配がした。蔵馬だ。
「お邪魔しますよ。」
鈴木はこの度のいきさつを話した。
「ふん…。そろそろ記憶を取り戻す絶好の時期かもしれませんね。」
あまり長く時間がたってしまうと、それだけそのままになってしまう可能性が高い。
幸い、薬が抜けてきたのか少しずつ思い出しかけているようだし、ここらで手を打とうというのである。
「目には目を というでしょう?」
蔵馬が幻覚物質などを焚いて死々若丸を催眠状態にする。
混沌とした意識の中から、彼が本来の自分を見つけ出すことができたなら…
「死々若の記憶が戻るんだな?」
「貴方しだいです。」
蔵馬はあえて頷かない。全員に緊張が走った。





意識が重い。
まただ。あたりが真っ白で何も見えない。
俺はここで道に迷い…
そうだ。未だに迷い続けているんだ。


さ迷い歩いた。
どのくらい歩いたのか。
景色は変わらない。
「死々若」
声が
聞こえた気がした。
後ろを振り返ってみる。誰もいない。
空耳…か?
再び前を向く。だがどこを向こうと見えるのは霧だけ。
…のはずだった。
しかし、その目に飛び込んできたのはたった今 見ていたものとはまるで異なっていた。

高級そうな部屋。ゆったりとしたベッド、テーブルにソファ。豪華に飾られた電灯。
なんと自分に似合わない部屋なのだろう。
「落ち着かないな…」
ベッドに腰掛けて呟いた。独り言のつもりだった。
「まあそう言うなよ」
声を発したのはソファに座っている3人の妖怪のうちの一人だった。

先ほどから突然景色が変わったり、人が現れたり、不可解なことが起こるのだが、催眠状態の死々若丸にそれを疑問に思う心は生まれてこなかった。
まるで本当にずっとここにいたような錯覚がわいてきて、状況を自然に受け入れていた。本人が意識しての行動ではない。

「確かに、俺たちみんな日本出身だもんな、設定は。こんな洋間は似合わねぇや」
「だが、これも優勝するまでだ。この闇アイテムを使ってな!」
3人のうちの一人がガムをかみながら言った。手には黒い桃のマークが描かれた丸いものを持っていた。
「…ところで何でお前だけ2つもアイテムもらってんだよ?じじいの趣味はわかんねぇな」
「え?」
自らの手元を見ると、刀と薄い布が握られていた。

ワアアアア
大歓声にハッと顔を上げる。
周りは数多の観客に囲まれている。ここは闘技場。
またもや夢を見るように移り変わった場面。
「始めっ!」
審判の合図に、腰の刀を抜き、構える。
しかし
「霊光鏡反衝!!」
すさまじい光に巻き込まれて、この場面は一瞬で終わった。


死々若丸は目を覚ました。そこは、武術会が用意した病院だった。
「ん…」
まだ頭がボーっとする。
「目が覚めたか?」
隣のベッドから声がした。
「鈴木。俺は…そうか、俺は幻海に負けてここへ。」
ようやく頭がはっきりしたようだった。
「お前がここにいるってことは、俺たちは負けたんだな。」
残念よりもすっきりしたような表情で言う。鈴木も同じ気持ちでいると思ったから。
しかし、何も返ってこなかった。鈴木は何を考えているともとれない顔で、何も言わず立ち上がった。
何かが変だ。死々若丸は初めてそう思った。
「鈴木…傷はどうした?」
自分と同じように戦って敗北したはずの鈴木には怪我の一つもない。違和感の元はそれだった
いや、違う。
それだけじゃない。今ここにいることはもっとなにかが間違っている。
今自分は病院で手当てを受けて、それが最新の現在だと思っているのに何かが引っかかる
鈴木の表情は何を語る?少し寂しそうにただ見つめる瞳はなにを示している?
「違う…そうだ、暗黒武術会はもう終わったんだ。
ズキン
強い痛みが頭を襲った。


突き刺さるようだった痛みはすぐにひき、もう一度ゆっくりとまわりを見渡す。
そこは、ホテルでも闘技場でも病院でもなく、一面 霧が立ち込める元の場所だった。
ただし今は一人ではない。そこには、病院だと思っていた場所と同じように鈴木が立っていた。
「俺はずっとここにいたのか…」
ようやく、すべてがはっきりとわかった。
独りで、取り残されて彷徨って。本当はずっと同じ場所でもがいていたんだ。
「迎えに来たよ、死々若。」
手を差しのべる。その手をしっかりと捕まえる死々若丸。
「ただいま、鈴木。」

霧が晴れた。




沈黙を保っていた部屋のドアが開いた。
部屋の外で見守っていた陣たちの視線が一気に集まる。出てきたのは鈴木一人に見えた。
「鈴木!どうだったんだ?」
「記憶は?」
鈴木は答えずに少し笑って、視線を後ろのほうにやった。
視線の先にいた人物は、恥ずかしげに肩の上に現れた。ちび若だ。
「…心配かけたな。」
「死々若!!」
「もう大丈夫なんだな?」
死々若丸は返事のかわりに鈴木の肩から飛び降り、元のサイズに戻った。
「いや〜よかった」
「ったくコイツ!」
「痛、痛いっ」
酎や陣などは死々若丸に駆け寄り、殴ったり頭をくしゃくしゃになでたりして喜びをあらわした。
「もう2度とこんな目に遭わすんじゃないぞ?」
凍矢が言う。
それを受けた鈴木は、もみくちゃにされている死々若丸を救い出した。急に引き寄せられた死々若丸はバランスを失って鈴木に体重をまかせる。
そんな死々若丸を腕に抱きながら
「安心しろ、もう2度と離さないからな。」
宣言する鈴木。
「フン」
体勢を直し、鈴木の腕を振り払う死々若丸。
顔が紅潮している
「たとえまた記憶を失ったって…何度でも思い出してみせるさ。」
小さな声。しかし確実に届いた。鈴木は感動する
「死々若…」
「ただし制裁は受けてもらう!」
「え?」
考える暇もなく拳がとんできた。
「よくもまあ一ヶ月も放っておいてくれたな!!」
「よ〜しやっちまえ!!」
「ちょ待っ!!ぎゃああ」
今度は鈴木がもみくちゃだ。
愛の鞭である。
「っしゃー今夜は宴会だぜ!!」
「鈴木のおごりな!」
復活祝いというよりも、飲んで騒ぎたいだけのようにも思えたが。
とにかくこれで6人衆が本当に全員集合した。それだけのことで騒ぐのもまたいいだろう。

この日は遅くまで、声が絶えることはなかった。
明日からはまた2人きりの毎日。

長らくお待たせしちゃってごめんなさい;;そして長い…長すぎるだろ…。
リクはギャグ小説。そう仕上がってるのかどうだか、果てしなく不明です。。と、とりあえずシリアスではないということで(^^;
みどころは鈴木氏の変装っぷりとケンタ若(笑)
あぁ…蔵馬ファンの方ごめんなさい; でもやっぱり、六人衆は蔵馬に頭が上がらないと思うんですよね(笑)

炎舞様、こんな駄文ですがよろしければお受け取り下さいませ(_ _)"
どうもありがとうございました!