「大変だ、皆を呼んでくれ!!」
そういって表れたのはおなじみ、美しい魔闘家オブ鈴木。
最近見かけないと思ったらどうやらまたどこかにこもって実験だか発明だかをしていたらしい。
「とーっても緊急の用事だから、必ず集まるように言ってくれよ☆」
と、頼まれた死々若丸は意外にも素直に いつもの面子を呼びに行った。
「と、いうわけらしいので、来い。」
真っ先につかまったのは陣と凍矢。しかし二人は苦い顔をする。
「オレ…行きたくねぇだ。」
「どうせいつもの公開実験だろ?」
そう。鈴木はいつもあの手この手で人を集めては実験台にしているのだ。"緊急の用事"だなんて、嘘。
長いこと一緒に過ごしている陣たちにはもうそれがわかっている。
「俺もそんなことだろうと思う。」
「わかってるなら…俺たちは遠慮しておく。」
が、
がしっ
そそくさと去ろうとした凍矢の腕を死々若丸がつかむ。
「お前らがいなかったら俺が犠牲になるだろう」
…その声には過去の経験から来る重みがこもっていた…
「オメ、自分が助かればそれでいいだか?!」
「最近はなんかそれでもいい気がしてきた…」
「相当疲れてるんだな、お前。」
というわけで、(死々若丸に脅されて)全員集合となった六人衆。
笑顔で出迎える鈴木。
「よくきたな!ゆっくりしていけよ。」
「ゆっくりって…緊急の用事はどうしたんだよ。」
が、お構いなし。
「そんな細かいこといわないで…お茶でも飲めよ。」
やれやれ…いったい何をさせられるんだか。
と思ってお茶をいただいた次の瞬間
「!?」
酎と鈴駒と陣…同時に茶を飲んだ三人がいっせいに倒れた。
「よし!」
「よくない!!!」
すかさず凍矢と死々若丸の鉄拳が見舞われる。
「俺たちを呼んだのは新しい毒薬の実験のためか?」
立ちはだかる凍矢。
「いや〜、ハハハ…」
「飲んだこいつらもこいつらだ。鈴木に出されたものを無警戒に口にいれるとは…」
というのは死々若丸。
長い付き合いから…どうせこんなことだろうとわかっていたのである。
「お前、苦労してるんだな。」
「まぁな。」
倒れた三人は完全に意識を失っている。
「お前はいつもいつも…予告なしに人を巻き込むなと言っているだろうが!!」
「わー!ちょっ、危ッ 危ッ!」
死々若丸につかみかかられてバランスを崩す鈴木。
「研究熱心も大概にし…
「うわっ」
「おい、気をつけろよ死々わ…
ガシャン
ぐしゃっ
…。
喧騒の後、沈黙が流れた。
もつれ合った三人は棚に飾ってあった花瓶を落としてしまった。
「あ〜あ…死々若が暴れるから…」
「誰のせいだと思って…凍矢、花踏んでる。」
「うわぁっ」
無残にも花は散り、花瓶も砕けてしまった。これでは元に戻せない。
「どーすんだよコレ…」
と、そこに近づいてくる足音。
三人はとっさに破片と花を隠した。
「あら、皆さんお揃いだったんですか。」
やってきたのは雪菜。
いつも和やかな雪菜だが、今はそれに癒されている場合ではない。冷や汗が背をつたう。
「あら?…ここにあった花、知りませんか?」
ドキぃッ!
「い、いや、俺は知らんぞ。」
死々若、どもりすぎ。
と、凍矢が
「それならさっき…鈴木が!持っていったよ。」
(俺かよ!)
(元はといえばお前のせいだ、責任取れ。)
(そんなぁ〜)
「鈴木さん?」
疑わず澄んだ瞳で見つめてくる雪菜。さすがに鈴木も良心が痛む…
「あっ、そう、水を換えようと思っていたんだ。ちゃんと元に戻しておくよ。」
それを聞いて安心した様子。
「そうですか。あれは蔵馬さんにいただいたものなので…今日の夕方にまたいらっしゃるそうなので、それまでによろしくお願いしますね。」
パタン。(去)
…。
「 ど う す る ん だよ!!」
「よりによって蔵馬の花を…死んだな、鈴木。」
地獄の特訓で蔵馬の恐ろしさは身にしみている彼らだからこそその恐怖は計り知れないものがあるだろう。
絶望する鈴木。
「こうなったら夕方までに代わりを用意して、何事もなかったように見せかけるしかあるまい。」
「だな…。」
日暮れまではあと数時間しかない。が、こうなったらやるしかない。
「あの花…たぶん魔界の花だ。」
「凍矢、知ってるのか。どこに咲いてるんだ?」
希望を見い出す鈴木。しかしそれと反対に深刻な面持ちになる凍矢。
「噂に聞いたことがある。」
ごくり
「大変入手困難で希少な花だ。
まず、魔界の針の山のカルデラの中のつり橋を渡り、蜘蛛の糸を上った先にある泉の精に案内されるダンジョンの
角のタバコ屋のおばちゃんの息子の勤務先の社長の自家用へリポートに乗って
北西に進むと見えてくる塔にとらわれている姫が大好きなお好み焼き屋の頑固オヤジの
部屋の抜け道から通じている遺跡の番人に賄賂を払うともらえる宝石をはめ込んだ石板によって目覚める
古代の生命体から享受されるエキスによって発生する光が示す地点を3キロ掘り進んで突き当たる鉱脈で採掘した銀で作ったスプーンで
食べるキャビアが大好きな食通をうならせる料理人のみが入れる秘密の扉の先にある暗号を解読してたどり着いた先の……
「…もしかして凍矢のことだから、ギャグじゃない…よ…な」
「だろうな。」
「…そして裏山の一本杉の根元を掘ると出てくるタイムカプセルの中の…おい、鈴木?」
もはや耳に入っていない。
「時間がないんだ、早く行け。」
さめざめ涙の鈴木に死々若丸が冷たく言い放つ。
「行って死ぬのと 何もしないで蔵馬に殺されるの、どっちがいい。」
…どっちも嫌
というわけにはいかないので、鈴木はしぶしぶ旅に出た。もちろん独りで。
「せいぜい生きて帰ってこいよ〜。」
さらば、鈴木。
***
数時間の後…
「ふぅ、なんとかごまかせそうだな。」
凍矢がいう。
鈴木は無事に生還していた。その手にしっかりと例の花を持って。
まあ、あぁ見えて(←失礼)彼も妖力値10万Pを越える妖怪である。かような試練は甚だ面倒くさいが幻海の元での修行に比べたら楽なものだっただろう。
なんとか元のように花を飾ることができた。
「こんな時間だ…そろそろ来るか」
噂をすれば影。
足音が近づいてきて、スーッとふすまが開けられる。
雪菜につれられて蔵馬がやってきたのである。
「おやこんにちは。」
「よ、よう。」
凍矢と死々若丸はきわめて自然に振舞うように努めた。
「花…」
ドキッッ!
「珍しい花だなぁ。どこで摘んできたんです?」
え?
「あぁ、それでしたら、先日魔界のお役人さんが立ち寄った際にくださったんです。」
穏やかに答える雪菜。
「いけない私ったら、今お茶ご用意しますね。」
花のことを知らない?
混乱したまま、蔵馬と取り残された二人。
「あの花…蔵馬が持ってきたんじゃないのか?」
恐る恐る…
「違いますよ。」
「「!」」
凍矢と死々若丸はどーっと力が抜けた。
なんだよ。こんなにハラハラしながら鈴木が苦労して採ってくる必要なかったのかよ!
安堵もつかの間
「で…俺が持ってきた花瓶はどうしたんだ?」
あたりを恐ろしく冷たい妖気が包む…
「え…?」
蔵馬が雪菜にあげたのは、魔界産の花ではなくそれが活けてあった 花瓶 だったのだ。
もちろん、新しく用意した花瓶はそれとは似ても似つかないもの…
「ししし知らん、そんなもの!」
が、足元には片付けそこねた破片が。
「…お仕置きの時間だ…」
妖狐様降臨!
違うんだ、鈴木が…鈴木がー!!
そんな鈴木は疲労のため自室でバタンQ。
訴えはむなしく空に消ゆ。
さて 目が覚めた後 鈴木が、五人から盛大な報復を受けたことはいうまでもない。
「ふぁーよく寝た。…あれ?どうしたんだ皆そんな怖い顔して…ぎゃー!!」
おしまい…
毎度の事ながら遅筆で申し訳ありません;; それ以前に出来がこんなんですみません(汗)
愛を込めて六人衆をいたぶってみました!(笑) というか六遊怪と陣、出てくる意味ナイ…凹
いったいここは誰が住んでいるどこなんだ!多分幻海ばあさん家なんだけど…
すみません!細かいトコ突っ込み豊富でほんとすみません!ワン・パタァン!
ちらりとでも楽しんでいただけたなら…(涙) このたびはどうもありがとうございました!