魔界の穴騒動の終了後、蔵馬にかきあつめられ幻海の元で修行することになった六人衆。
最後には全員が妖力値10万ポイントを超えるS級妖怪となった。
…が、その道のりはけっして楽なものではなかった。



「やめ!」
稽古終了を告げる幻海師範の声に、六人が組み手を止める。
「一時間後に晩飯にするよ、とっとと風呂で汗流してきな。」
と、道場をあとにする。

本日もよく修行した六人衆、風呂は束の間のリラックスタイムだ。
そしてむかえた晩の食卓、テーブルに並んだのは
「うまい食事」…蔵馬特製調合の、魔界の薬草スペシャルディナーである。
確かに体にいい、疲れを癒す、妖力増幅を促進するすばらしい調合なのだが、これがまたなんともいえず…

「不味…」
「なんか言ったかい?」
「いぇっっ何も!」

まさに良薬口に苦し・なのである。

「少しでも残したら蔵馬に仕置してもらうからね」
なんて脅しに、ついその様子を想像してしまい、皆がやや青ざめながら箸を早めた。


なんとか恐怖の食事を終えたあと、休憩をはさんで夜の鍛練に入る。
話題はその、食事について。
「あの青いのが辛いよな〜。」
「それより赤紫のやつが臭いがきつくて俺は嫌いだ。」
皆ぼやくばかり。

「でも、残すと大変な目に遭うし。」
鈴駒は一度、ひそかに残そうとして「大変な目」に遭ったらしい。

「だから俺の特製ふりかけをかければどんな毒草も高級美味に変わるというに」
鈴木が言うが
「「「「「それはいらない。」」」」」
「珍味の間違いだろ」
お約束…。

「まぁ俺は、飲酒は制限されてないからいいけどよ。」
と言うのは酎。
「でもいい肴がないのは不満じゃないのか?」
凍矢の指摘に、まぁな、とうなずく。

「たまにはもっとまともな物食いてぇだ!」
つい陣が声を大きくする。
「そんなに嫌ですか」
「まぁ、効果があるのは認めるが、味は…。」
「久々にこってりしたもの食べたーい」
「肉食いたーい、にくー…ってあれ?
いつの間にか一人多いことに気付く。
「くっ蔵馬!!」
気配を消して近付いていた彼に全員がビビり、後ずさる。

蔵馬はどこか冷ややかな笑みを浮かべ、
「差し入れを持って来たんだけど…」
「!!」
その手には消費期限寸前で安売りになっていた団子。
今かいた冷や汗も忘れ、いつぶりかのまともな食べ物にときめく六人衆。
…しかし蔵馬様は団子のように甘くはなかった。
「そうだ、今から軽く手合わせをして、勝ち残った一人にあげましょう。」
やっぱり怒っているのか…酷な提案を。

それを言われた途端、場の空気が変わった。
絶対に勝って、団子はいただく!!
そんな気合いの入った妖気だ。

「お茶でも淹れてくるよ」
と蔵馬が出ていった、ドアを閉めたのを合図に戦闘が開始された。
「はぁあっ!!」
陣は風で一番近くにいた鈴木を吹っ飛ばし、構えている酎めがけて拳を出す。
死々若丸は小鬼姿でちょこまかと凍矢の氷を避け、そうこうしているうちに復活した鈴木は鈴駒と交戦する。
吹きすさぶ風に、足下には氷、ひしめくヨーヨー、広がる酒のにおいと響く死霊の声。
道場が壊れるのではないかというほど激しく六人の攻防は続いた。

これもすべてはお団子のため。
高みの見物で彼らの食への執念に気付いた蔵馬は、これは使える・と密かに思った。


***


後日、また六人の様子を見に幻海宅を来訪した蔵馬は、こんなことを言った。

「全員が30000ポイントを突破したら、ご褒美に焼肉食べ放題に連れていってあげよう。」

「焼き?!」
「肉!」
「食べ放題!!?」

それを受けて目に見えて燃える六人。なんともわかりやすい…。


妖力値30000ポイントに向かって修行に気合いが入る。

弱音も飲み込み、日々の厳しい鍛練をこなす。
条件は「全員」なので、他の仲間のことを気遣い助け合う。
いつも渋々だった食事も、これを食べたら焼肉…と、自分に言い聞かせながら耐えた。

その甲斐あって妖力値の向上率は著しく上昇し、六人の絆も強まった。



そして


「凍矢、32,049ポイント。」
「よしッ。」

「これで全員、妖力値30000ポイント達成だね。」
っしゃー!歓喜の声をあげる六人。
「どうよ?」という視線が一斉に蔵馬に送られる。
蔵馬はニコと笑って、
「よく頑張りましたね、想像以上だ。
  じゃあ約束の場所に行くとしようか。」
と、修行着のまま六人を連れ出した。

「じゃあこれ着けて」
と配られたのは、アイマスクとヘッドフォン…
で、電波〇年?
なぜ、焼肉屋に行くのにこんな移動方法なのか…。


疑問に思っているうちに着いたらしい、ヘッドフォンを外される。すると聞こえてきたのは

ブモォォ=3

なにかこう、獣の鳴き声や鼻息・足音。しかも一頭や二頭ではない…かなりの気配。
「アイマスクを外して」

と、視界には一面の広大な草原…を埋めつくす、数百頭の 豚のような猪のような獣が自分達を囲んでいる。

「ここは…魔界?」
「蔵馬、焼肉って…」
六人に嫌な予感が走る。
「まさか、こいつら」
おそるおそる口に出すと、蔵馬はにっっこり笑って、
「焼肉、捕り放題。」
ぱんっ と 蔵馬が手を叩くと獣は一斉に彼らに襲いかかった。

マジでかぁぁ!!!!



やむを得ず応戦する、が、四方八方を囲まれても困窮しない。確実に、修行の成果がでているわけだ。
しかし相手は全頭倒れるまで収まりそうにない。


「こんなに食えねえよ!!!」



幻海&蔵馬の厳しい修行は、まだまだ続く…。



「じゃあ次、40000ポイントいったら寿司でもご馳走しようか?」
(東京湾の地図を広げながら)

((((((沈められる??!!))))))



こうして六人は、めきめき強くなっていきましたとさ。

「地獄だ、あれは…。」

はい、お待たせしましたアホな話でした。いい加減蔵馬君に六人衆で遊ばせるのやめようっって自分(--;
六人には蔵馬がトラウマであってほしいです(うわぁ)
修行の日々は、アメとムチの ムチしかないような生活だったのでは…(笑)
ほんの少しでも楽しんでいただけたら幸いです;; はくびさん、リクエストありがとうございました!