死々若丸の長い散歩が終わった。

家に着き、空中でくるりと回るともとのサイズに戻った。
「死々若〜、この花たぁいせつに飾っておくからな♪」
鈴木はご機嫌だ。
しかし死々若丸は少し浮かない顔をしている。
「…おい死々若、着物が破れているぞ。どうしたんだ?」
ようやく怪我のことに気付く鈴木。
「花をとったら…猫に襲われた。」
「猫ぉ?何でまた。尻尾でも踏んだのか?」
「さあな。もしかしたらあの花畑はあいつにとって大切なものだったのかも知れない…」

悪いことをしてしまったかな。
そう思うと少し心が痛む。
窓からさす夕陽に照らされる哀愁漂うその姿は、なんだか消えてしまいそうに切な気だった。

「まぁ、どんな事情があろうと知らなかったんだから。気に止むことはない。
‥‥それよりも、お前が無事でよかった。」
そっと後ろから抱き締める。

「ふ、フンッ、顔に傷でもつけられてたら問答無用でたたっ切っていたがな。」
死々若丸は頬を少し紅潮させながら言う。
そんな様子が鈴木には可愛くて仕方がない。
思わず、抱きしめる腕に力が入る。
「俺だってそうするよ…」
耳元で囁く。抱き締める腕はそのまま懐へと滑り込んでいく。
「んん…」
鈴木の手は徐々に奥へと入り込む。
「っ!」
突然、死々若丸がその手を振り払った。
「死々若…?」
「あ‥、飯の前に湯を浴びてくる。今日は肉じゃがだったか?楽しみにしてるぞ。」
そういうと、死々若丸はそそくさと去ってしまった。

呆然とする鈴木。
(どうしてだ?この美しい愛撫の何が気に食わなかったというのだ!?)
ショックで思考が混乱…もとい、いつもこんな感じの鈴木。

ふと拒まれた右手に目をやる。
その指先に、ほんのわずか、血がついていた。
恐らく猫にやられた傷だ。
「死々若…」


浴槽につかる死々若丸。
別に大した傷ではなかった。ただ傷口を触られ、おもわず鈴木の手を払い除けてしまった。
(気にしてるかな―)
出血はもう止まっていた。
(まぁいい、後で…)
きっといつものように、放っておいても襲われるだろうから続きはその時に。

この怪我。人間サイズならなんら問題ない。しかし子鬼の姿になると、体の表面積が小さい分結構な傷になるのである。
(暫く変身はよした方がいいな。)
そりゃあ、人間サイズであれば生活にさしさわりはないし、鈴木と抱き合うのも問題ない。
ただ一つ、鈴木の肩の上で甘えられないというのが残念だった。

…ごたごた考えていたら、すっかりのぼせてしまったようだ。
浴衣に着替えながら、頭がフラフラした。
「お、出たか死々若。肉じゃがも良い具合いに煮えたところだぞ。」
「あぁ。」
鈴木が食卓を並べる。
「いただきます」

鈴木は料理がうまかった。今日の肉じゃがも、味が染みていて絶品だ。
「うむ、美味い。」
美味しいのだが、のぼせた体にこの陽気。さらにほくほく肉じゃが。
(あつい―)
食事のあと、死々若丸は居間で横になってダレていた。

食器の片付けを終えた鈴木がそれに気付く。
「死々若〜、そんなとこで寝てると風邪ひくぞ?」
反応がない。
「仕方ねぇなあ。」
と言って、そっと抱き上げる。(もちろんお姫様だっこだ。)
そのまま寝室へ運ぶ。


(美しい―)
布団に寝かせたあと、目の前の美少年の寝顔をあらためて覗き込む。
(やはり、美しい私のパートナーは美しい者でないと。)
起きているときはなにかとうるさいが、寝顔はこんなにあどけない。
愛おしむ様にその長い髪を撫でる。

(…今日は疲れてるみたいだな。このままそっと寝かせてやろう。)
立ち上がろうとした。
その時
鈴木は引っ張られているのを感じた。死々若丸が、服の裾をつかんで引き留めたのだ。
「…夕刻の‥礼もなしに‥去る気か?」
「若?‥花の礼なら…ぁ、ちゃんとは言ってなかったな。…ありがとう、死々若丸。」
そういってそっと口づける。

鈴木は死々若丸を休ませたいと思っていたのでお礼は軽く済ませようした。
しかし、背中に回ってきた死々若丸の腕は強く自分を捕らえて放さない。
「死々若―…?」
「さっきは拒んで悪かった。俺なら大丈夫だ。」

さっき―
死々若丸の言う「夕刻の礼」というのは、「花の礼を言え」ではなく「拒んだ詫びをさせろ」ということだった。もしくは、「迎えにきてくれてありがとう」かもしれない。

「…いいのか?」
思いもかけない死々若丸からの誘いに、思わず聞き返す。
もちろん死々若丸は、そんな照れ臭い、答えの分かっている質問には返事をしてくれない。
それはオーケーということ。
鈴木も、それなら遠慮することもないと腹をきめた。

布団に入り込み、死々若丸の浴衣の帯をほどく。
白い肌の上を、鈴木の手がさまようように撫ぜる。

と、その時、死々若丸も負けじと鈴木を引っくり返し、その上に馬乗りになった。
「ぇっ?!」
そして鈴木の衣服も脱がせてやると、すかさずキスをした。
それは深くて熱い。
「死々‥若…?」
「どうした、かかってこい」
誘いスマイルで挑発。

「お前…やっぱり熱があるよ。」
普段はこんなに積極的に攻めてこないのに。
今夜は楽しめそうだ。

いよいよやる気になった鈴木は止められない。
「お前が攻めるのは100年早い!」
派手に押し倒して形成を逆転。
露な肌にキスの雨が降る。
「…すずき‥」
「死々若…」


二人の長い一日はまだ終わらない。


っぎゃーー!!何書いてんだーー!!!って感じ(赤面←阿呆)
しかしエロというにはまだまだ…。ていうか、甘々系?
まあとにかく、こうやって二人はいっつもいちゃこいてるわけですな。(←勝手に決める)