鈴木は案外人気がある。人望という意味もあるが、色恋の意味で。そりゃ確かにあの奇行を目にしてしまえば誰でもひくが、それを差し引けば、顔は二枚目だし引き締まった体をしてるし何より頭の回転が速くてよく気が回る。そんな面を知ってしまうと皆コロッと落ちてしまうのだ。
魔界で戦いにまみれながら生きて長い鈴木だが、そんな中でも女を知らないようではなかったし、恐らくそれなりにモテたのだろう。というか、今でも密かに鈴木に想いを寄せている奴はちょくちょくいる。彼らは結構ストレートに表現してくるのだが、鈴木は気付かない。本当に、ハタから見ていて相手が気の毒になるくらい、そういう気配を感じ取らない。
それは恐らく死々若丸のせいだ。
あまりに美しく人気の高い「若様」と共にいると、おなごはすべて目をハートにして若様目当てに寄ってくる。それに慣れて、麻痺してしまったのだ。男としての自信を喪失したわけではないが、「女=死々若丸が好き」という公式が無意識下で築き上げられてしまったのだ。
そして鈴木自身、死々若丸の事を愛しすぎて。
死々若丸の事が好きで好きで好きで愛しくて可愛くて手放したくなくて信頼していていつも忘れずに想っていて全てがたまらなくて。
相手もその気持ちに応えてくれていて。
それでもう他に何が要ると?
満たされた彼に恋愛の余地はもはや無くて、
男であるということがどんな障壁だろうとも、たとえそんなのは本当の恋じゃないといわれても、
この幸福に痺れてとうに何も感じない。
樹里ちゃんや酎が泣きそうな一本。 別名「もう君以外愛せない」もしくは「(他の人に)愛されるより(死々若を)愛したい」(笑)
おかしいな、こんなにきもちわるい感じになるはずじゃなかったんだがな。