「遅いな、死々若丸」
鈴若邸にお邪魔していた凍矢が呟く。死々若丸は、ふらっと出かけてしまってからまだ帰ってこない。外では曇り空が先程から大粒の雨を降らせはじめていた。
「まさか家出か?」
凍矢の指摘に、鈴木はお茶が喉に詰まって激しくむせた。
「げほっ…ばっ馬鹿なこと言うな!大方どこかで雨宿りでもしてるんだろ。死々若はいっつも傘持たないから。」
「冗談だ。まだまだ止みそうにないぞ、迎えに行ってやったらどうだ。」
「悪いな、行ってくる。」
鈴木は自分の傘と、死々若丸の分にもう一本持って外へ出た。
死々若丸の散歩は大抵 幻海の土地の中だ。広くて仕方ないが、少し探しているうちに彼のものらしき妖気を感じた。鈴木はそれを追う。
まもなく、森の一角で木の下にたたずむ死々若丸を発見した。やはり傘は無く、雨に打たれ全身がずぶ濡れでいた。
「死々若。」
鈴木が優しく声をかける。なんだか考え事をしていたようで、一瞬ひどくびっくりしていた。
鈴木の姿をみて、少しその表情がほころぶ。
「ほら、迎えに来たぞ。帰ろう。」
鈴木が、持ってきた傘を差し出す。しかし死々若丸は受け取らない。
「…面倒だ、貴様の傘に入れろ。」
返事も待たず死々若丸は鈴木の隣に。
「第一、そんな派手な傘 俺に似合うわけ無いだろ。」
確かに、和服の死々若丸に鈴木が持ってきた傘は似合わないかも知れない。
(もしかしたら何か仕掛けがあるかもしれないし…)
まだ降り止まぬ雨の中、二人は一つの傘で歩き始める。
「…っくしゅ」
「大丈夫か?そんな濡れてるから。肩に乗れよ。」
小さくなって肩に乗れば、歩かなくて済むし濡れなくていい。
しかし死々若丸は首を横に降った。
「このままがいい。」
そう言う死々若丸は少し照れているようだった。
鈴木はやれやれと思いつつ、こんなに甘えてくるのも珍しいので、おとなしく相合い傘を堪能することにした。
「とりあえず、濡れるだろ。もっとこっち来いよ。」
傘からはみ出している肩をそっとひきよせる。
そして歩き続ける。そんな雨の日のひとコマ。
散歩→雨→迎え。…前にもあったねこんなこと(ぎゃふん)
いや、ただの絵のおまけなんで勘弁してください;
しかし相変わらず若が別人。きっと鈴木が相合い傘せまってはっ倒されるのが本当かと。
雨も描いたけど 見えません(汗